トラブル防止のための遺言作成

遺言書はいつでも書けると考えている方が多いですが、現実には好きなタイミングで書けるわけではありません。「遺言能力」といって、遺言の内容を理解し判断できる能力が必要となっています。いわゆる認知症などになってしまうと、遺言書は作成できないのです。

自筆遺言

すべて自筆でなければならない

自筆証書遺言は、言葉のとおりすべて自筆でなければなりません。

用紙の大きさや縦書き、横書きといった制限はありませんが、ワープロなどで打ち込んだ文章である場合、自筆証書遺言の要件を欠いてしまうので注意しましょう。また、作成にあたっては簡単に消えない油性ペンなどを使用してください。

 

表題には「遺言書」と記載

次に表題についてですが、こちらは書かなくてはならないという規定はありません。

しかし、ただのメモと勘違いされ、捨てられてしまう恐れもあることから、少しでも発見した人にわかりやすくするため、「遺言書」といった記載をしておくと良いでしょう。

 

日付と署名捺印は必須

遺言書はいつ作成されたのかわからなければ無効とされてしまいます。よって、日付は必須です。必ず何年何月何日に作成したのかを記載しましょう。

 

また、誰が書いたものかわからなければ、当然、無効とされてしまうため、しっかりと署名捺印しておきましょう。この際、印鑑は実印である必要はありませんが、本人が残した遺言書だとわかりやすくするため、実印を用いるのも1つの手です。

ページが複数の場合は割印(契印)を

遺言書に枚数の制限はありませんが、ページが複数になる場合は割印(契印)をしておくと、一連の遺言書であることを証明できます。

また、バラバラにならないようにホチキスなどで止めておくと読み手に非常に親切です。

 

修正するくらいなら書き直すこと

書き間違いがあった場合、つい修正したくなってしまいますが、遺言書の修正のルールは非常に面倒なものとなっています。単に修正液や「×」などと線を引いただけで修正したことにはなりません。そこで、書き間違いがあった場合は無理に修正するのではなく、いっそ書き直してしまったほうが早いと覚えておくと良いでしょう。

 

自分の意思を簡潔にまとめる遺言書の中身については、基本的には自分の意思について簡潔に書けば問題はありません。

相続というのは、いくら遺言で「全財産を妻に」と記載しても、他の相続人には「遺留分(最低限相続できる権利のこと)」があり、必ずしも遺言書通りになるとは限らないのです。とはいえ、あまり難しく考えると遺言書の作成自体がスムーズに進まなくなるため、自分の意思を簡潔に書くことを意識するようにしましょう。



公正証書遺言

公正証書として公証役場で保存してもらう遺言のことを言います。

 

公正証書とは

公正証書とは、当事者に頼まれて第三者である公証人が作成した文書のことを言います。公文書として扱われるため、法的紛争の際に文書が真正であると強い推定が働きます。

 

公正証書遺言は依頼者が公証人に内容を伝え、それをもとに文書が作成されます。

 

公証人とは

公証人は法務大臣に任免された公正証書の作成者です。法律の実務に深くかかわった人から選ばれるため、法的有効性のある遺言書づくりをサポートします。

 

公証役場とは

公証人が在籍する役所のことを公証役場といいます。公証役場は全国にあり、足を運べない場合も公証人に出張してもらうことができます。

 

自筆証書遺言との違い

もっとも一般的な遺言書といえば自筆証書遺言です。自筆証書遺言と公正証書遺言の違いだけでなく自筆証書遺言の要件も確認しましょう。

 

公正証書遺言は全文を書かなくて良い

公正証書遺言は公証人に内容を伝えて、それをもとに公証人が作成します。よって、自筆で遺言書を書く必要がありません。一方、自筆証書遺言は「全文を」自筆で書かなければいけません。書くのがめんどくさいからとパソコンで書いたり代筆を頼んだりしてはいけないのです。

 

遺言書は遺書と違い書式や要件も厳格ですから、法律のプロの目を通すことが大切です。訂正の仕方が違うというだけで無効になる場合もあります。

 

公正証書遺言は公証役場に保管される

自筆証書遺言書の場合は何らかの原因で紛失することや、好ましくない人間に破棄されることが考えられます。一方、公正証書遺言は公正証書として公証役場に保管されます。公正証書遺言を確認するときも原本でなく写しを公証役場が発行します。

 

家庭裁判所の検認がいらない

 

公正証書遺言は公証人のチェックを受けているため法的有効性が認められます。一方で、自筆証書遺言を発見した時は家庭裁判所の検認を受ける必要があります。



公正証書遺言のメリット

公正証書遺言のメリットは、何といっても安全性と確立性にあります。

公正証書であること、法的な強さを持っていることはこのような点につながります。

 

  • 遺言が無効にならない
  • 遺言を紛失しない
  • 偽造を防止できる
  • 自分で書かなくて良い
  • すぐに遺産相続を開始できる


公正証書遺言のデメリット

安全で確実な公正証書遺言だからこそのデメリットもあります。

この点は有効な遺言書を作るために避けられないポイントであることも併せて理解しましょう。

 

  • 手続きに時間がかかる
  • 手続きに費用がかかる
  • 公証人や証人に内容を話さなくてはいけない


遺言事項

遺言は具体的に定めることがおすすめです。例えば財産についての遺言を定めた時、相続分だけを定めると相続する財産をめぐってもめることがありますが、相続する財産まで指定しておけば相続争いを防げます。

特に不動産を相続する場合は登記情報が曖昧であることを理由に遺言書が無効になってしまうことがあります。

他には、条件付きの遺贈を行う場合も条件を具体的に定めたほうが無難です。条件付きの遺贈の例としては「〇〇を全うしてくれれば遺産を引き継ぐ」というものがあります。

 

財産に関する遺言事項

相続とは財産を分けることですが、遺言では法定相続人でない人に遺産を継がせることも、法定相続人に財産を相続させないことも、そして法定相続人からその権利をはく奪することも可能です。

  • 相続分や遺産分割方法の指定
  • 遺贈
  • 寄付や一般財団法人の設立
  • 信託の設定

身分に関する遺言事項

 

  • 子供の認知

どもを認知すると遺産相続において嫡出子と同じ扱いになりますから、嫡出子の法定相続分や兄弟姉妹の相続する権利に大きくかかわります。

醜い相続争いが起きないよう相続する財産をはっきりと定めておくことや存命のうちに家族に非嫡出子について話しておくことが大切です。

  • 未成年後見人の指定
  • 推定相続人の廃除

遺言執行者の指定

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための人です。

特に子の認知や他人への特定遺贈、推定相続人の廃除などは遺言執行者が必要なので、スムーズに相続を行いたいなら事前に選んでおくことが望ましいです。

 

遺言執行者は信頼のおける第三者が望ましく、実務に慣れている弁護士がうってつけです。遺言書そのものを破棄されたくなければ遺言執行者に預けておくことや公正証書遺言として公証役場に保管してもらうことがおすすめです。特に公正証書遺言は検認の必要がないため手続きが楽になります。

 

 

もし、遺言執行者を定めない場合は家庭裁判所が選任を行います。つまり遺言執行者を定めないだけで手続きが面倒になってしまいます。遺言執行者が拒否した場合や死亡した場合も家庭裁判所が選任することとなります。

 

遺言は、法的効力にその意義があるので、しっかりと法的効力のある遺言事項を記すことが大切です。

遺言書は有効と認められるための条件が厳しく、少しのミスですべてが無効になってしまいます。当事務所では、法的効力のある遺言書を作成いたします。。